090 殷富門院大輔 090殷富門院大輔見せばやな 雄島のあまの袖だにむ なれにし色は 変はらずものをあなたに見せたいものです。宮城の雄島の漁師の袖でさえ、波をかぶってもこれほど変色(血の涙で赤く)はしませんよ。 2026.02.25
089 式子内親王 089式子内親王玉の緒よ 絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの よわりもぞする私の命よ、絶えるものなら絶えてしまえ。このまま生き長らえれば、耐え忍んでいる恋心が周囲に漏れてしまいそうだから。 2026.02.25
088 皇嘉門院太夫 088皇嘉門院太夫難波江の 蘆のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき難波江の芦の節のような短い「仮寝(一晩)」の恋ゆえに、この身を滅ぼすほど恋い慕い続けなければならないのでしょうか。 2026.02.25
087 寂蓮法師 087寂蓮法師村雨の 露もまだひぬまきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れにわか雨が通り過ぎ、その露もまだ乾ききらぬ真木の葉。そこから霧が立ちのぼっていく秋の夕暮れは実に見事だ。 2026.02.25
086 西行法師 086西行法師嘆けとて 月やは物を思はする かこち顔なる わが涙かな嘆けと言って月が私を物思いに耽らせるのか。いや、そうではないのに、月のせいだと言わんばかりに流れる私の涙であるよ。 2026.02.25
085 俊恵法師 085俊恵法師夜もすがら 物思ふころは明けやらで 閨のひまより もる月影夜通し恋に物思いに耽っているこの頃は、夜がなかなか明けてくれません。寝室の戸の隙間から、無情にも月の光が差し込んでくるばかりです。 2026.02.25
084 藤原清輔朝臣 084藤原清輔朝臣ながらへば またこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しきもし命を長らえたなら、今のこの苦しみも懐かしく思い出されるだろうか。かつて辛いと思っていた過去も、今は恋しく思えるのだから。 2026.02.25
083 皇太后宮大夫俊成 083皇太后宮大夫俊成世の中よ 道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなるこの世には辛いことから逃れる道などない。思い詰めて逃げ込んだ山の奥深くでさえ、寂しげに鹿が鳴いているのだ。 2026.02.25
082 道因法師 082道因法師思ひわび さても命はあるものを 憂きにたへぬは 涙なりけりつれない人を思い悩んで、それでも命だけは長らえているけれど、辛さに堪えきれず溢れてくるのは涙なのだなあ。 2026.02.25
081 後徳大寺左大臣 081後徳大寺左大臣ほととぎす 鳴きつる方をながむれば ただ有明の 月ぞ残れるほととぎすが鳴いた方を眺めてみたけれど、姿は見えず、ただ明け方の月だけが空に残っている。 2026.02.25